『「日本ブランド」で行こう』       アレックス・カー 著    ウェィツ

                      

タイトルが「『日本ブランド』で行こう」だったので、日本を褒めてくれる本だと思ったら、ちょっと違った。

 東洋文化研究家&作家であるアメリカ人の著者が日本の現状と、これからあるべき姿を語っている。アメリカで生まれ、日本で育ち、イギリスに留学して中国を学び、現在は日本とタイを行き来している著者から見れば、日本の抱える問題がはっきりと見える。

 自然や景観を壊してダムや道路をじゃんじゃん造る「浪費」や、なにかと「オール日本」でやりたがる閉鎖的な性格や、「犠牲」を愛する国民性がゆえに国策などが仮に間違っていても突き進んでしまうことなど、淡々と語られている。

 例えばそれは、「不思議なぐらいこの国はお金をどぶに捨てている」、「日本という国はすばらしい機械だけど、一つだけ部品が欠けている。つまりブレーキです」と、著者自身、日本で暮らしていて感じたことそのまま、という感じ。その素朴な意見は、素朴がゆえに、斜めに受け取ることもできず、こちらにストンと届いてしまう。

 でも、そういう「日本」の性格って、個人レベルでは、何も変えられないじゃない?と、最近、何に関しても思ってしまう私だが、著者はシンプルに答えている。

 「社会全体を変えようと言われても、一人の力ではかなわないから、結局自分の周りを何とかしようということから始まる」と。たとえば、日本の価値観が当たり前にならないように、自分の子どもを留学させるとか、国内でもボランティアやNPOに送るとか、そういう個人レベルでできることを、「たくさんの人がやると、社会が変わる」。

 肩に力の入らない著者は、「それぞれの役割や立場があるから、どこの国もたくさんの国のなかの『ワン・オブ・ゼム』になればいい」という。「ワン・オブ・ゼム」になるためには、「ゼム」を知って、自分たちの「ワン」を明確に知らなくてはいけないわけで…、個人レベルで、まだ見ぬ子どもを留学させる前に、結局、すべては「ゼム」を知ることから始まる。 (真中智子)



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